Ⅵ 嵌合(かんごう)
Ⅵ 嵌合(かんごう)
嵌合とはジョイントのすり合わせの事です。それには頭部管の嵌合と足部管嵌合があります。「頭部管が緩くて抜けてくる」とか、「足部管が抜けて落ちてしまった」などの事故は珍しくありません。逆に「かたくて抜けない」とか「硬くて微調整が困難」等の意見も。
<調整方法>
足部管:嵌合用ペンチを使い行います。このペンチは先端部に直角に広げ口を溶接し中心にすり割りを入れた平行ペンチとしたものです。緩い場合は<拡張型>を使い、内側から広げます。この場合、入口付近を先に広げ硬さを確認してから奥を広げます。段差ができないよう注意して少しずつ行います。最終的にコツコツと小さなガタが出る場合はリングの下までペンチを入れてリングごと広げます。そうすることでリングの淵の部分を広げることができるのです。
硬い場合は<縮小型>のペンチを使用します。全体的にまんべんなく縮め、硬さを調整します。極端にサイズの異なる(緩い)ものを合わせる時は嵌合用シームローラーを使います。

頭部管:嵌合用芯金に装着した頭部管のジョイント部をバニシングヘラでバニッシュ、金属はより硬いものの間でこすられると伸びる性質があります。金箔の加工法を考えるとよく分かるでしょう。パイプ状のものは伸びると言う事は径が大きくなる、つまり膨らむということになります。まんべんなくバニッシュし、少し硬めになったら表面をサンドペーパー(♯600)で研削します。バニッシュしたヘラの跡をとる必要があります。取れたら♯800のペーパーで仕上げ、表面をバフ研磨して終了です。
実はこれらの作業ができる技術者はあまりおりません。驚くことに全国に10か所ほどあるリペアの学校でも十分に指導されていないのが現状です。先日も頭部管が硬いからと依頼したところ、ロウを塗って使ってと言われたそうです。確かにロウや石鹸は即効性があり良い方法ですが問題もあります。そのまま使っていると汚れなどが混じり研磨剤のような効果(現象)でジョイント部が磨滅してしまいます。洋銀の楽器はゴミが入るとキズが付きやすく粘りのある性質から取れなくなってしまう事故も少なくありません。
確かに40~50年前まではメーカーも付属品としてグリスをケースに入れて付けていました。自分で塗って使ってください、ということです。でも多くの事故が起こったため現在では付けているところはありません。ユーザーの方に注意をしていただくとともに、リペア技術者も古いやり方にとらわれずきちんとした技術を習得して欲しいと思います。

